超高齢化社会に突入した日本では、寝たきり状態で介護が必要な人も年々増えています。そんな介護の場で起こりがちな症状の一つとして、大人用紙おむつによる「おむつかぶれ」が挙げられます。 排尿コントロールが難しくなった高齢者介護の必需品である大人用おむつですが、皮膚トラブルの原因となることもあるのです。 そこで今回は、大人のおむつかぶれの原因と対策について詳しく解説します。
おむつかぶれとは、おむつが密着するお尻や陰部の皮膚に発赤や湿疹などを引き起こす症状のことです。汗や排泄物の蒸れなどが原因になることもありますが、中には皮膚に常在しているカビの一種であるカンジダの異常増殖などによるものもあります。 症状の程度はさまざまで、皮膚に軽い炎症を起こしているだけのケースもあれば、表皮の一部がただれて排泄の度に強い痛みを引き起こすケースもあります。
介護の場で問題となりやすい「おむつかぶれ」の原因は多岐にわたりますが、以下のようなものが挙げられます。
加齢による肌の変化
私たちの肌の表層は角質層で覆われています。角質層は角化した皮膚の細胞が積み重なった構造をしており、肌に潤いを閉じ込め、肌の深層への刺激を防ぐバリア機能を担っています。年齢を重ねると、この角質層の構造が乱れて肌のバリア機能が低下しがちになります。 このため、加齢に伴って肌の潤いが失われやすく、さまざまな外的ダメージを受けやすくなるのです。また、年齢を重ねるごとに肌に広く分布する皮脂腺や汗腺の機能も低下するため、肌の潤いはさらに失われて、ますます角質層の構造が乱れやすくなるのです。
このように、高齢者の肌は若い世代と比べて外的なダメージをはるかに受けやすい状態となっています。その結果、おむつの着用による皮膚の蒸れや雑菌の繁殖によるダメージによって、おしりや陰部の炎症=おむつかぶれを引き起こしやすくなるのです。
長時間の着用
長時間着用していると高温多湿な状態になりやすく、陰部の雑菌が繁殖しやすい環境になるため、おむつかぶれを引き起こす場合があります。 高齢者は新陳代謝が低く、汗や皮脂を分泌しにくいとはいえ、陰部やおしりの雑菌、排泄に伴う汚れはたまりやすいものです。陰部やおしりが不衛生になることで、おむつかぶれの誘因となることがあります。
肌への摩擦
寝たきりの生活を送っている高齢者は同じような姿勢でいることが多く、おしりへの摩擦も多くなります。高齢者の肌は若い世代の人と比べて薄い上にもろいため、摩擦を受けるとその部位の表皮がただれたり、えぐれたりすることがあり、それがおむつかぶれの誘因になることも少なくありません。
大人のおむつかぶれを防ぐには、上に挙げた原因を解決していく必要があります。そのためには次のような対策を行いましょう
おむつ交換の頻度・商品を見直す
おむつかぶれの原因の一つとして挙げられる「おしりの蒸れ」はおむつの交換の頻度や商品を見直すことで改善する場合があります。おむつ商品には吸収量ごとにさまざまなサイズや種類があり、通気性を持たせたお肌に優しい商品もあります。その人に合ったおむつ選びも重要になります。また、就寝直前の飲食を控えめにすることも対策の一つです。
おむつ交換に注意する
古いパッドを交換する際にパッドを引っ張って引き抜こうとすると、摩擦が起こり皮膚トラブルの原因となることがあります。おむつを交換する際、力加減によってはおむつと皮膚が擦れて皮膚に負担がかかりますので、優しく当てることを心がけましょう。 おむつ交換を見直すことで、皮膚トラブルを防ぐだけでなく、衣類への漏れによる介護者の負担やおむつ使用者の不快感を少なくすることができます。
拭き取る時になるべく摩擦を与えない
陰部やおしりを清潔に保とうとするあまり、尿や便を拭き取る際に力が入ってしまうことがあります。しかし、陰部やおしりは非常にデリケートな皮膚・粘膜でできているため不用意に力を加えることでダメージを与えてしまうことがあります。 拭き取る際は、なるべく力を入れずに優しく行うようにしましょう。また、アルコール成分の含まれたおしりふきは人によって肌に強い刺激を与えることがあります。使用した後に発赤が見られるような場合には、ぬるま湯で濡らしたガーゼなどを使用するようにしましょう。
サイズの合ったおむつを使用する
大人のおむつにも、体格によってさまざまなサイズがあります。その人に合ったサイズのものを使用しないと、おむつ内の蒸れや締め付けが強くなったり、余った繊維によるヨレが肌の摩擦を引き起こしたりすることも少なくありません。 おむつを使用するときは、必ず体格に合ったものを選ぶようにしましょう。
肌を清潔に保つ
おむつの中に湿気がこもり、ふやけた状態の肌に尿や便などの刺激が加わると、肌が荒れやすくなってしまいます。肌に刺激を与えすぎないよう気をつけつつ、汚れはしっかりと拭き取りましょう。また、いくら吸水力が優れたおむつや尿とりパッドを使用していても、何日もつけっぱなしにすることは止めましょう
十分な対策を行っていてもおむつかぶれができてしまうことは多々あります。おむつかぶれは放っておくとどんどん悪化していきますので、早め早めのケアが何よりも大切です。
おむつかぶれができたときは、いつもより頻繁におむつを交換しておしりや陰部を清潔な状態にキープするよう心がけましょう。また、入浴回数を増やしたり、排便後は人肌のお湯で洗い流したりするのもよいでしょう。
さらに、かぶれがひどく、赤くただれているような場合には、セルフケアだけでは対処できないこともあります。
痛みも伴うような場合には、抗炎症作用のある塗り薬を使用するなど、医療の力を借りることも一つの方法です。
ただし、おむつかぶれを悪化させる原因はカンジダと呼ばれるカビの一種によるものなどさまざまで、それぞれ治療法は異なります。薬が必要だと思われる場合には、自己判断で市販薬を使用せず、まずは医師に相談して症状に適した薬を処方してもらうと安心です。
記事監修医: 伊藤メディカルクリニック院長 伊藤 幹彦 先生
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