スマート、かつスピーディー。それが「小牧原クリニック」の院長となる櫻井啓貴先生の第一印象です。2021年夏オープンの「V・drug 東田中店」店舗内テナントに入居が決まっているクリニックは、2022年4月に開業予定。今回お話をうかがったのは開業の1年前にあたります。「ホームページと予約システムも簡易ですが自分で作成し、LINE公式アカウントも取得済みです」という用意周到な様子に驚きました。
「ご縁があり、タイミングがちょうど良かったですね」と話す櫻井先生が、開業を決意してから情報収集を始め、自ら電話で問い合わせしたことをきっかけに、今回の物件に即決するまでの期間は約半年。「医療者であることが地域に貢献すること。患者さんのQOL向上のために、いかに失敗しない開業を行うか」の明確なビジョンに沿った経営計画のもと、開業準備がトントン拍子に進んでいます。
僕の医師歴は10年目で、そのうち精神科医歴は8年目。診療科目は、愛知医科大学の学生時代にもともと興味が一番あったものです。父親と同じ整形外科も含めていくつか興味があった中で、研修医の時に実際に科を回って決定。大学卒業後は愛知医科大学病院に勤務し、犬山病院へ異動しました。
患者さんが何に困っているのかを見極めることです。患者さんが訴えている症状を良くすることが一番の仕事ですが、その背景でどんなことが起きているかを解明して、患者さんにフィードバックをすることが大切。まず困っている気持ちを受け止めて、寄り添いながら診察のバランスを養い、ご本人と周囲の方々が良好な関係でいられる治療法を考えていきます。治療の途中で中断してしまわないように、ちょうど良いタイミングで通院して治療を続けられる関係ですね。
2020年4月に大学病院から民間病院に異動したのが、開業を考えたきっかけです。民間病院で働いてみた最初の1カ月で、民間病院でできることがまだまだあると気付きました。そして今後のライフプランをいろいろ考えてみると、開業タイミングは今がいいなと。コロナ禍の影響はそこまで感じませんでしたね。世の中の変化により、ストレスを感じる患者さんの受け皿になりたいと考えています。
一人ひとりの患者さんの診察時間を十分に確保すること。大きな病院の勤務医の課題、メンタルクリニックの課題を考えた時に、短い診察時間が悩ましいところでした。それをクリアするためにも、経営をいち早く軌道に乗せることが大事。経営面を気にせず診察に集中できるバランスを考えたベストな形で、初期投資とランニングコストに気を付けるミニマム開業を目指しました。
収益も大切ですが、まずはいかに支出を減らすかを考えました。人間は弱いもので、崇高な理念もお金の前では簡単に曲がってしまう恐れがある。医療者としての理念を貫き、患者さんにとって通いやすい環境を維持できるように。医院を大きくする時にいきなり小から大ではなくて、小から中の段階的にクリアすることを目指しました。特に、これから世の中に開業医があふれてライバルが増えると、事業が成り立たなくなる可能性が高まります。日本の人口が減っていくことも考えると、できるだけ失敗しないようにリスクは避けたいですよね。
地元の小牧を中心に、車で30分から1時間の圏内で探しました。春日井、江南、岩倉、名古屋市北区あたりですね。医療モール、テナント、自己所有の様々な形態を調べて、ドラッグストアと組むのが有利でしかないということは、僕の中で決まっていました。主なメリットは、「調剤薬局と駐車場を探す煩わしさがない。待ち時間に買い物ができる」ということ。自己所有物件の戸建てはコストが跳ね上がるので、ミニマムには合わず。賃料の高い医療モールのテナントも候補地から外しました。「開業します」と伝えると、「ぜひうちで」というお声がけやご紹介をたくさんいただいて、実際にいくつかお話を聞いてから決めています。
自分の思いを一番汲んでくれたからです。まず開業地を探すために「場所と相手をどうするか」と考えた時、「V・drug」を候補に入れて、僕から直接電話で問い合わせをしました。そこで開業希望地の小牧に新規出店計画があり、その中にテナント区画があるという情報をもらい、点と点が見事にマッチ。担当者さんにお話を聞いて信用できたのと、条件面も良かったので即決しました。
このエリアで「V・drug」の出店はきっと続くから、3年待つといくつかチャンスはあるだろうとは予想していました。待つ期間が1年くらいだといいなと思っていましたが、半年だったのでうれしかったですね。他社テナントの条件も事前に把握しており、僕が探した中で「V・drug」の条件を超えるものはないだろうと比較できたのも良かったです。最初に「V・drug」に出会っていたら、もう少し時間はかかっていたかもしれませんが、回り回って同じところに戻ってきたと思います。
ちょっと変わった場所に出店しているイメージでしたね。地元シェアが2〜3番手だから、巻き返しを狙うための最大手とは違う戦略がきっとあるのだろうと。実際に問い合わせをしてみると、賃料が比較的安い印象を受けました。
「V・drug」での開業は戸建てとテナントがありますが、初期投資をできるだけ抑えるためテナントを希望しました。「V・drug」が2021年夏にオープンしたら院内に備品を入れて、2022年4月の開業を待ちます。敷地内には戸建ての内科も準備中だそうで、医療モール的なイメージになりますね。新規出店の工事スケジュールに沿って打ち合わせを重ね、現場にも立ち合い、更地から完成まで理想の形に近づいていく様子を確認し、担当者さんとの信頼関係も築くことができました。科の特性上、患者さんが通いやすいようにクリニック自体は目立って欲しくないけれど、認知度は上げたいので、ドラッグストアの奥に位置するテナントはありがたかったです。
そうですね。先ほどもお伝えしましたが、僕のビジネスモデルは失敗しにくいミニマム開業で、経営をいち早く軌道に乗せることが当面の目標。コスト面の理由からあまり広すぎないように考慮しましたが、ランニングコストを安くできそうだと見込みが十分に取れたので、当初想定していたよりも広めになりました。もう少し小さくても良かったのですが、空間の広さは後で変えることができないので、融通が利くように自分の欲を出したところです。結果的に、コストは一般的なテナント開業の半分くらいに抑えることができました。開業時は看護師と事務スタッフを雇わず、僕が一人ですべての業務を行うワンオペ経営です。
開業すると、最初は経営で悩む。そして経営が安定してくると、人事の悩みが出てくる。まずWで悩むのをやめたいと思い、一人で始めることにしました。経営が安定してきたらスタッフを雇うことは選択肢にありますし、ありがたいことに妻が「働きたい」と言ってくれているので、子どもが幼稚園に入園したら、手伝ってもらおうと思っています。ワンオペ経営は予約診療制で、この科だからできること。東北に僕の師匠がいますが、このエリアでは見ないビジネスモデルですね。
ワンオペ経営のメリットは、コスト削減や人事問題の回避だけではありません。院内の業務をすべて自分でやることで、例えば受付で現金とクレジットカード、PayPayの支払いに対応し、患者さんそれぞれの生活の背景が見えると、診療に役立つことも。また、病院全体を自分の身をもって把握すれば、雇用の時にどの業務をどのように任せて指導するかを考えやすいですよね。
妻から「家にいる時間は減るの?」と心配されましたが、業務のことを考えると、そこまで変わらないと思います。12歳・5歳・3歳・1歳の子どもがいて、休日はほとんどみんなの相手です(笑)。4人分の教育資金を考えると、リスクを取るわけにはいかないですよね。というのもあって、このビジネスモデルになりました。午前中・午後の診療人数も想定しており、集患は診療の質が落ちることなく、診療以外の業務や自分の事務作業にも支障をきたさない程度で。スタッフを雇うかは開業後の次の分岐点。そこに何年でたどり着けるか、ですね。
櫻井啓貴
愛知医科大学医学部を卒業。愛知医科大学病院精神神経科医員、医療法人桜桂会 犬山病院医師、愛知医科大学病院精神神経科助教として臨床経験を積む。地元の小牧で経営の早期安定化のためのミニマム開業を行う。
所在地 | 愛知県小牧市東田中2010-1 |
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アクセス | 名鉄小牧線「小牧原駅」徒歩14分 |
科目 | 精神科 心療内科 漢方内科 |
TEL | 090-2465-3256(問い合わせはLINEまたはメール) |
URL | https://komakiharaclinic.crayonsite.com |
開業日 | 2022年4月1日 |